COLUMN
コラム
断熱材について
2025.11.21
家の性能
家づくりを検討し始めると、カタログやネットでさまざまな断熱材が目に入ってきます。
熱伝導率の数値を比べたり、価格だけを見比べて「この断熱材は性能が良さそう」「こっちは安いからお得」と判断してしまいがちですが、実はそれだけで選ぶのはとても危険です。
このコラムでは断熱材の根本的な考え方とそれぞれの特徴を纏めています。
プランサーバーが使っている断熱材についてはコチラ
1. 「どの断熱材でも同じ」は大きな誤解
一言に断熱材といっても色々な特徴があります。
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熱は通しにくいけれど、湿気に弱いもの
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断熱性は高いが、燃えやすい・有毒ガスの懸念があるもの
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断熱材そのものは優秀でも、施工性が悪く実際の現場では性能が出にくいもの
こうした「数値では見えない特徴」を理解しないまま、断熱材を選ぶと、「高断熱って聞いて建てたのに、冬がこんなに寒いとは思わなかった……」
という後悔につながってしまいます。
この記事では、断熱材の種類と特徴、そして選ぶときに必ずチェックしておきたいポイントを整理してお伝えします。
2. 断熱性の低い家は、寿命も健康も削ってしまう
2-1. 日本の家が短命と言われる理由
日本の住宅は、建て替えまでの平均年数が約30年前後と言われています。欧米の住宅が60年以上使われるケースも多いことを考えると、その差は非常に大きいものです。
その大きな原因のひとつが「湿気」と「温度差」です。断熱性・気密性が低い家では、冬になると室内でも場所によって温度が大きく違い、壁の中に結露(壁体内結露)が発生しやすくなります。この結露がカビや木材の腐朽を招き、建物の寿命を縮めてしまいます。
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壁の中が冷たくなる
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室内の暖かい空気に含まれる水蒸気が冷やされて壁の中で結露(水滴)する
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結露の水分を餌に見えない場所でカビや腐朽菌が増え、じわじわと構造体が傷む
こうした「目に見えないダメージ」は、数年では表面化しませんが、10年・20年と年数が経つほど確実に影響を与えます。
2-2. 温度差が健康リスクになる「ヒートショック」
断熱性の低さは、家の寿命だけでなく、そこに住む人の健康にも深く関わっています。
特に注意したいのが「ヒートショック」です。
ヒートショックとは、暖かい場所から急に寒い場所へ移動したときなどに、急激な温度変化で血圧が大きく上下し、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしてしまう現象です。日本では浴室・脱衣室での事故が多く、高齢者の浴槽内での死亡数は、交通事故死のおよそ2倍にのぼるというデータもあります。
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家全体の温度差を小さく抑える「高断熱・高気密」の家は、こうした事故のリスクを減らし、冷え性・アレルギーなどの症状を和らげる効果も報告されています。
3. そもそも「断熱材」とは何か?
断熱材とは、屋根・壁・床・基礎・窓まわりなど家の外側をぐるりと包み、室内と屋外の熱の出入りを抑えるための材料です。イメージとしては、家全体に着せる「分厚いダウンジャケット」のような役割だと思っていただくと分かりやすいでしょう。
3-1. 性能を見るときの基本指標「熱伝導率」
断熱材の性能を示す代表的な指標が「熱伝導率(W/m・K)」です。
これは「どれくらい熱を通しやすい材料か」を示す数字で、値が小さいほど熱を通しにくく、断熱性能が高いという意味になります。
ただし、
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「熱伝導率が優秀」=「良い断熱材」とは限らない
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実際の現場では、施工方法・厚み・気密処理なども含めたトータルで性能が決まる
という点を忘れないことが大切です。
どれだけ熱伝導率が優秀な断熱材でも施工厚が薄いとしっかりと断熱してくれませんし、隙間だらけの家だと外気の流入があるから断熱の効果が半減してしまいます。
4. 断熱材の大きな分類は「繊維系」と「発泡プラスチック系」
住宅用の断熱材は、大きく分けて次の2つのグループがあります。
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繊維系断熱材
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発泡プラスチック系断熱材
それぞれの代表例と特徴を簡単に整理しておきます。
4-1. 繊維系断熱材の主な種類
① グラスウール
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ガラスを繊維状にした断熱材
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比較的価格が安く、多くの住宅で使われている
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ただし、水分を含むと性能が大きく落ちるため、湿気対策・施工の丁寧さが重要
② ロックウール
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玄武岩などの鉱物を繊維にした断熱材
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耐火性に優れ、音を吸収する性質もある
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こちらも湿気に注意が必要で、防湿・防水の設計とセットで検討したい材料
③ セルロースファイバー
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古紙などを原料にした紙系の断熱材
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綿のようなふわふわした材料を壁や天井に吹き込んで充填する
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繊維の隙間に空気を多く含むため断熱性が高く、音の吸収や調湿(湿気を吸ったり吐いたりする)にも優れているとされています
④ 木質繊維系ボード(インシュレーションボードなど)
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木質繊維を板状に固めた断熱材
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調湿性があり、自然素材志向の家づくりで採用されることも多い
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板状のため、外張り断熱などで使われるケースがある
4-2. 発泡プラスチック系断熱材の主な種類
① ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)
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発泡スチロールの一種
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基礎や床まわりなどでよく使われる
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吸水しにくく、軽量で施工しやすいのが特徴
② 押出法ポリスチレンフォーム(XPS)
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EPSよりも密度が高く、強度・断熱性が高い材料
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床下や外張り断熱など、外部に近い場所で使われることが多い
③ ウレタンフォーム
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発泡ウレタンを現場で吹き付けて施工するタイプが代表的
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細かな隙間にも入り込みやすく、気密性を確保しやすい
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一方で、燃えやすさや、燃焼時のガスについては注意が必要で、採用する場合は防火対策や仕様の確認が欠かせません
④ 高発泡ポリエチレンフォーム
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比較的軽量で、水を吸いにくい断熱材
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配管周りなど、部分的な断熱にも用いられる
⑤ フェノールフォーム
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フェノール樹脂を発泡させた断熱材
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熱伝導率が低く、薄くても高い断熱性能を確保しやすい
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耐火性にも優れたグレードがあり、高性能な外断熱に用いられることが多い
ぱっと羅列しただけでもたくさん。
価格と性能のバランスを見ながら選定する必要があります。
5. 断熱材を選ぶときの「黄金チェックポイント」
断熱材を比較するとき、カタログの熱伝導率・価格表だけでは見えてこない重要なポイントがいくつかあります。ここでは、最低限チェックしておきたい観点を5つ挙げます。
5-1. 燃えにくさ(耐火性)
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火災時にどのように燃えるか
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延焼をどれくらい遅らせられるか
繊維系の中には燃えにくい性質を持つものも多く、発泡プラスチック系でも耐火性を高めた製品があります。材料だけでなく、石こうボードなど他の部材との組み合わせで防火性能を確保するケースも多いため、「どの仕様で・どの等級を満たすか」を確認することが大切です。
5-2. 燃えたときに有毒ガスが発生しないか
火災は、炎そのものよりも「煙」や「ガス」で命を落とすケースが多いと言われています。発泡プラスチック系の中には、燃焼時に有毒ガスを発生させるものもあるため、
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採用する断熱材が燃えたとき、どのようなガスが出る可能性があるのか
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防火被覆(石こうボードなど)でどの程度リスクを抑えられるのか
を、設計者や工務店に確認しておくと安心です。
5-3. 内部結露にのしやすさ
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施工が悪いと内部結露をおこしてしまう断熱材
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比較的内部結露はしない断熱材
など、材料によって性質が大きく異なります。
日本は高温多湿の気候で、しかも地域によって条件が違うため、
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施工の段階で壁体内結露が起きにくい構成にしているか
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通気層や防湿シートの納まりが適切か
まで含めて、「断熱材+構造+通気+防湿」をセットで考えることが重要です。
よく湿度を旧放出する断熱材といっている方がいますが、
そもそも断熱材内部に水分となる湿気を吸収させるという事自体、間違っています。
5-4. 熱への強さ(耐熱性・経年劣化)
断熱性能は、年数が経つにつれて変化していく場合があります。
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発泡ガスが抜けて性能が落ちるタイプ
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長期的に見ても性能変化が小さいタイプ
などがあるため、「初期性能」だけでなく「20年後・30年後の性能」をどう考えているかも確認ポイントです。
5-5. 施工性と気密性の取りやすさ
どんなに高性能な断熱材を選んでも、施工にムラがあったり、隙間だらけでは性能は発揮されません。
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壁の中で下にズリ落ちて隙間ができやすいか
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柱・コンセントまわりなど、複雑な部分でもしっかり充填しやすいか
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気密シートやテープと組み合わせたときに、気密ラインが取りやすいか
現場での施工をイメージしたときに「きれいに納めやすい断熱材かどうか」も、選定において大きなポイントになります。
6. まとめ:断熱材選びは「家族の未来」を選ぶこと
断熱材は、完成したあとにはほとんど目にすることのない部材です。
しかし実際には、
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家の寿命
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光熱費
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冬の寒さ・夏の暑さの感じ方
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家族の健康リスク(ヒートショック・カビ・アレルギーなど)
といった、長期的で大きな影響を与える、とても重要な存在です。
断熱材を選ぶときは、
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断熱性能(熱伝導率)だけにとらわれない
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燃えにくさ・有毒ガス・湿気・耐久性・施工性をセットで考える
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自分の住む地域の気候や、ライフスタイルに合った仕様かどうかを確認する
という3つを意識して、検討していくことが大切です。
しっかりといい家づくりしましょうね。
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